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「旅立ち」 


ここは高天原病。ここの一室に一人の少女が入院している。
彼女の名前は「姫咲 奏深」
もうこの病院に入院してから4年になる。
「・・・・・・・・・・・」
少女は読書が趣味で、暇さえあればいつも本を読んでいる。
中でも本の種類に関係なく、分厚い本が好きで、辞書や医学書など
到底子供には理解不可能な内容の本も読み漁っているので
知識としては大半が身についている。
「なぁカナ・・・たまには外とかで遊ばないのか?」
「・・・・・・・五月蝿い・・・」
神のいたずらなのか、本好きな少女の奇跡なのか
彼女のそばには浮遊する1冊の本・・広辞苑・・もとい
「コウジー苑」
ふざけた名前ではあるが、これでも中身は広辞苑。
奏深がまだ10歳の頃に本の精霊が広辞苑に取り憑いたものである。
「そうは言っても今日も天気は快晴じゃないか」
「今日は・・・ダメなの」
「何がダメだっていうんだい・・・まったく・・・」
「・・・・・・・・・・・」
ここの病院は街中にあるわけではない。
病院と言っても大規模な施設があるわけではなく
高原の療養所のようなそんな雰囲気のあるものだった。
「仕方ない、じゃぁオイラは外の子達と遊んでくるよ」
「ん・・・」
そういうとコウジーは開いた窓から飛び出して行った。
ここに入院している子供たちにとって、不思議な存在のコウジーは
いい遊び相手になっているようだ。

コンコン・・
しばらくして病室のドアが軽くノックされた。
「・・・はい・・」
「やぁ奏深ちゃん、具合はどうだい?」
入ってきたのは担当医の先生。
「別に・・問題ないです」
社交辞令のようにいつも通りの返事を未だ本を読みながら返す奏深
「んー、そうかい・・・ま、それじゃいつもの往診を・・・」
「先生、往診に来た訳じゃないでしょ」
奏深は読んでいた本に栞を挟むと担当医に方に向き直った
「えっ?」
「今日は何かお話があって来た・・違う?」
すると先生はキョトンした顔で
「いや〜やっぱ奏深ちゃんには隠し事はできないか」
奏深には生まれたときから少し変った力を持っていた
そのうちのひとつが「感」
一般の人よりも感が冴えていて、時にはその感の先まで見えたりもすることがある。
「と、言うことは・・僕の言いたいことはわかってるってことかな?」
「ん・・大体は察しがつきます」
「そうか・・それじゃ率直に聞こう、君はどうしたい?」

「で、カナ・・・オイラに何の相談も無く決めたワケ?」
「ん・・・」
「はぁ・・・仕方ないか、カナがそう決めたのならオイラは付いていくだけだよ」
「ありがと・・・」
担当医の話の内容とは、入院先の変更だった
と、言っても受け入れ先は病院ではなく、1つの大きなお屋敷
いうなれば病院外での施設療養だ。
「でも、大丈夫なのか?」
「何が?」
「そのお屋敷の主人って男の人なんだろ?」
「うん・・・でも先生のお友達だって・・・」
「あの先生の友達って信頼できるのか?」
「そのときはそのときよ・・・」
「いいのかなぁ、そんなので・・・」
「それに、お屋敷には大きな書庫があるんだって」
「本音はそこか・・・」

それから2日後、奏深とコウジーは高天原病院の人たちに見送られ
療養先「蒼の館」へと向かった・・・・














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